全19回卒業生 飯沼和男
(1)高校生時代を振り返って
新潟県立村上高等学校は、創立以来130年を迎えようとする旧制中学校以来の伝統校であります。最近は、少子高齢化が進み、生徒数が激減しておりますが、私たち団塊の世代、第一次ベビーブーム世代が高校生時代には、1学級定員が52名、11学級で1学年の定員が572名でした。最大の生徒数を誇ったのは、全日制の課程第20回卒の学年で、12学級、1学年の定員が624名でありました。 この頃は、村上市岩船郡内で全日制の課程の高等学校は村上高等学校と村上桜ヶ丘高等学校の2校のみでもありました。現在は、村上中等教育学校と定時制・単位制の課程の荒川高等学校もあります。
(2)勉学への強い意欲を持つ青少年への責任を担って
かつて村上高等学校には郡市内に数多くの本校と分校がありました。それは交通の便の関係と勤労学生と呼ばれた昼働き、夜学ぶ等の生徒の勉学の場として存在していました。新潟県内には、昼間定時制の課程と呼ばれる午前中に授業を受け、午後からは家業の農業をする生徒のために設置された学校でした。
太平洋戦争後には、勉学に強い意欲を持つ青少年が数多く存在し、公立高等学校のみでは収容しきれず、私立高等学校が設置され、そこでも生徒が溢れかえっていました。新潟県のみならず全国的に定時制の在籍生徒数が全日制のそれを超える数であったこともあり、模擬試験等を実施すると定時制の生徒が全日制の生徒の成績を超えることもありました。
(3)豊かな時代が織りなす光と影
日本が徐々に豊かになると、個々の家庭の生活も豊かになり、全日制へ進学する生徒が増加し、定時制への進学者が減少して閉科・閉校や全日制の課程への改組したり、定時制で学ぶ生徒も勤労学生でなく、多様な学び(不登校や引きこもり等)の生徒が多くなっています。
私も新潟県で高等学校教員として、45年間(県立・新潟市立・私立高等学校及び県・新潟市行政・学校法人等)勤務し、その中で定時制の閉科に係わる記念碑の設置をさせていただきました。当時、その高校の同窓会長はある市の助役さんでしたが、「学年の生徒数が一桁になった生徒を見て、自分たちの後輩と思えないので、閉科の打診を貰ったときに躊躇無く承諾した。」と話されていました。その碑文に想いが込められています。
「働きつ 学ぶ志(こころざし) ここに在りき」
(4)時代の流れを見据え…輝く未来に向って…
現在、村上高等学校は少子高齢化のために1学級の定員が40名、1学年が4学級(160名)から3学級(120名)になろうとしています。そして、大赤字路線として羽越本線村上・鶴岡間をバスの代替えにという検討をしていると聞きます。今後の村上高等学校等への通学を考え、課題山積です。一方、カーボンニュートラルから逆行し、乗車人数のみでなく、貨物の運搬についての評価も検討していただき、経営努力等に御尽力をお願いしたいものです。
時代の流れの中で、村上高等学校の教育が、地域の青少年を集め、生徒が成長し、地域のみならず日本から世界で有為な人材として活躍できる力を育成するものとならねばなりません。一つの課題があります。それは新潟大学医学部等に地域枠があり、その枠が最大数と聞いております。県内の高校生が他県の高校生の学力を超えられずに入学困難となり、医師不足や偏在によるものです。
地域の大学等進学率が過去の低い時期には、地域の人材で地域の教員をまかなえないこともありました。一方、中等教育学校等も少子化等から、整理縮小も視野に入っておるようですが、「中等教育の複線化」を目的に設置し、「受験競争激化に歯止め」をかける付帯事項も設置法にあることから、教育の本質等からも方向性を考えていただきたいと思います。 是非、全国の各高等学校の教育の在り方等の情報を収集し参考にして、村上高等学校の教育の在り方について特徴・有為性等を確立すべきと考えますが、如何でしょうか?地域や保護者等の見識等の醸成にも係わっていると思います。